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この連載は、2026年7月のMicrosoft 365値上げをきっかけに、中小企業が「Excelでやっている仕事」を仕分けして、人数課金に振り回されない環境を作るまでを書いた記録です(全5回)。vol.1は、値上げの中身と影響額、そして今すぐできる対策についてです。
こんな方向けの記事
- Microsoft 365の値上げ通知を受け取って、「うちはいくら上がるのか」を知りたい経営者・総務の方
- 契約の更新月が近づいていて、このまま更新していいのか迷っている方
- 従業員5〜30名くらいの会社で、Officeのライセンス費用を少しでも抑えたい方
- 「そもそもExcelに何でもやらせすぎでは?」と薄々感じている方

2026年7月1日、法人向けMicrosoft 365の何が変わったか
Microsoftは2025年12月に法人向けプランの価格改定を発表し、2026年7月1日から新価格が適用されています。新規契約はこの日から、既存契約は7月1日以降に迎えるプランごとの更新日から新価格になります(月ごと払いの契約は2026年7月の利用分から)。つまり、まだ請求額が変わっていない会社も、次の更新で必ず上がります。
中小企業がよく使うプランの改定内容は次の通りです(いずれも1ユーザーあたりの月額・年間契約・税抜)。
| プラン | 改定前 | 改定後 | 差額 | 上げ幅 |
|---|---|---|---|---|
| Business Basic | 899円 | 1,049円 | +150円 | +16.7% |
| Business Standard | 1,874円 | 2,098円 | +224円 | +11.9% |
| Business Premium | 3,298円 | 3,298円 | 据え置き | — |
| Office 365 E3 | 3,448円 | 3,898円 | +450円 | +13.1% |
| Microsoft 365 F3 | 1,199円 | 1,499円 | +300円 | +25.0% |
※ 表はMicrosoft直販サイトの表示価格(年間契約・1ユーザーあたり月額・税抜)。販売代理店(携帯キャリア系など)経由の契約は、税込・月払いの別価格体系になっている場合があります。出典: Microsoft公式ブログ(2025年12月5日発表)、Microsoft直販サイトの表示価格(2026年8月時点)。
注目してほしいのは、中小企業向けのBusiness BasicとBusiness Standardほど上げ幅が大きいことです。大企業向けのE3/E5は数%〜13%なのに対し、Basicは16.7%。一方でBusiness Premiumは据え置きなので、「上位プランに上げれば実質値上げなし」という誘導にもなっています。
Microsoftが挙げている理由は、Copilot Chatのアプリ組み込み(Word・Excel・PowerPointで使えるエージェントモード)、SafeLinks Liteなどのセキュリティ機能の追加、メールボックス容量の50GB増量といった機能強化です。言い換えると、「使っていない機能が増えたぶん、値段も上がった」という会社が、中小企業には相当多いはずです。
うちはいくら上がる? 5名・10名・30名の試算
差額だけを人数と12ヶ月分で掛けると、年間の増加額はこうなります。
| 人数 | Business Basic(+150円) | Business Standard(+224円) |
|---|---|---|
| 5名 | +9,000円/年 | +13,440円/年 |
| 10名 | +18,000円/年 | +26,880円/年 |
| 30名 | +54,000円/年 | +80,640円/年 |
「年間数万円なら、まあいいか」と思った方も多いと思います。私もそう思います。ただ、見るべきは差額ではなく総額と構造です。Business Standardを10名で使っている会社は、年間で251,760円をOfficeに払うことになりました。30名なら約75万円です。そしてこの金額は、人を1人採用するたびに月2,098円ずつ増え、数年おきに「機能が増えたので」という理由で上がります。実際、2023年4月には円安を理由に約15%(オンラインサービス)、2024年4月にはさらに約20%の日本円価格の引き上げがあり、今回は3年あまりで3回目の改定です。
人数に比例して増え、こちらの都合と関係なく上がる。中小企業にとって一番相性が悪いコスト構造です。
今すぐできる対策5つ
対策は「今の契約のまま減らす」ものから「構造を変える」ものまで、5段階あります。上から順に効果が大きくなりますが、手間も増えます。
1. ライセンスの棚卸し(退職者・休眠・二重契約)
一番地味で、一番確実です。退職した人のライセンスが残っていないか、メールしか使っていない人にBusiness Standardを割り当てていないか、部署ごとに別契約していて二重になっていないか。管理センターの「ライセンス」画面で割り当て状況を出すだけで、10名規模でも1〜2ライセンス浮くことは珍しくありません。
2. 月額課金を年間契約に切り替える
上の価格表は年間契約の価格です。月ごとに解約できる「月額課金」は、これより2割ほど高く設定されています。人数の増減が少ない会社なら年間契約にするだけで実質的な値下げになります。ただし年の途中で人数を減らせない(減らしても返金されない)ので、採用・退職の予定を見てから決めてください。
3. プランの過不足を直す
BasicとStandardの違いは、ざっくり「デスクトップ版のWord・Excelが入っているかどうか」です。ブラウザ版で足りる人、そもそも文書をほとんど作らない人(現場・営業・パート)をBasicに落とすだけで、1人あたり月1,049円の差が出ます。逆に、セキュリティ機能のために上位プランを検討しているなら、据え置きになったPremiumを確認する価値があります。
4. 「文書を作るだけ」の人を、Office互換ソフトへ
Officeを開く目的が、見積書・案内文・簡単な表の作成だけ、という人は意外と多いものです。この層には、Excel/Wordのファイル形式(xlsx/docx)をそのまま読み書きできる互換ソフトで十分な場合があります。無料のものもあれば、人数課金ではなく買い切りや定額のものもあります。ただし取引先とマクロ付きのファイルをやり取りしている人、Excelで複雑な集計をしている人には向きません。どの製品が何に向くかは、次回vol.2で実際のファイルを開いて検証します。
5. 「台帳」の仕事をExcelから出す
5つの中で一番効くのがこれです。顧客リスト、案件の進捗、対応履歴、在庫、シフト表。こうした「台帳」をExcelで管理している会社は多いですが、台帳は本来、表計算ソフトの仕事ではありません。複数人で同時に更新できない、最新版がどれかわからない、検索も集計も手作業、スマホから見られない。この不便さを我慢するために、全員分のExcelライセンスを払い続けている、という構図になりがちです。
台帳を業務システム(顧客管理システムなど)に移すと、台帳を触るためだけにExcelを開いていた人がExcelを必要としなくなります。Officeの席数を減らす一番確実な方法は、Excelでやっている仕事そのものを減らすことです。
根本策:Excelの仕事を3つに仕分けする
対策4と5を組み合わせると、値上げへの対処は「Excelで何をしているか」を棚卸しする作業になります。私は、中小企業のExcelの仕事はだいたい次の3つに仕分けできると考えています。

- 文書づくり(見積書・請求書・案内文・提案資料)— Excel/Wordの形式で保存できれば十分。互換ソフトで代替できる
- 計算・分析(売上集計・原価計算・ピボット・マクロ)— Excelの本領。ここは無理に替えない
- 台帳(顧客・案件・対応履歴・在庫・シフト)— そもそも表計算の仕事ではない。業務システムに移す
多くの会社では、②の「本当にExcelでなければいけない仕事」をしている人は、経理や管理職の数名だけです。残りの人が開いているのは①か③。①は互換ソフトで、③は業務システムで置き換えれば、Excelのライセンスは②の数名分で済みます。
値上げは腹立たしい出来事ですが、この棚卸しをする「きっかけ」としては悪くないと思っています。この連載では、①の互換ソフト選び(vol.2・vol.3)、③の業務システムと文書作成をつなぐ方法(vol.4)、そして顧客管理をExcelから出す具体的な手順(vol.5)を順に書いていきます。
Microsoft 365の値上げについてよくある質問
「microsoft 365 値上げ」「microsoft 365 料金」で実際によく調べられている疑問に、この記事の内容を踏まえてお答えします。
値上げはいつから適用されますか? 既存の契約も対象ですか?
新価格の適用は2026年7月1日からです。新規契約はその日から新価格、既存の契約は7月1日以降に迎える更新日から新価格になります。今の請求額が変わっていなくても、次回の更新で上がると考えてください。
Microsoft 365は買い切りとサブスク、どちらがいいですか?
買い切り版(Office 2024など)は今も販売されていて、1台のPCで数年使うなら総額は安くなります。ただし法人で使う場合、メールやクラウドストレージ、共同編集は含まれず、セキュリティ更新にも期限があります。「文書を作るだけの人」には買い切りや互換ソフト、「メール・共有・共同編集まで使う人」にはサブスク、と人ごとに分けるのが現実的です。
Microsoft 365を安く買う方法はありますか?
正規の範囲では、①月額課金から年間契約への切り替え、②プランの見直し(Standard→Basic)、③使っていないライセンスの削減、④販売パートナー経由の契約で支払い方法や請求のまとめ方を相談する、の4つです。ネット上の「格安ライセンスキー」はボリュームライセンスの不正転売であることが多く、法人では使わないでください。
Business BasicとBusiness Standardの違いは何ですか?
最大の違いは、デスクトップ版のWord・Excel・PowerPointがインストールできるかどうかです。Basicはブラウザ版とモバイルアプリのみ、Standardはデスクトップ版も使えます。メールとTeams、ブラウザでの簡単な編集で足りる人はBasicで十分です。
そもそもMicrosoft 365は全員に必要ですか?
全員には必要ないことがほとんどです。Excelで複雑な集計やマクロを使う人、取引先とOfficeファイルを頻繁にやり取りする人には必要ですが、見積書を作るだけの人や台帳を更新するだけの人は、互換ソフトや業務システムで置き換えられます。この記事の「3つに仕分けする」方法で、必要な人数を数えてみてください。
次回予告
vol.2では、Office互換ソフトを法人目線で比較します。OnlyOffice・LibreOffice・WPS Office・Collabora Online・Googleスプレッドシートの5つで、実際の見積書やシフト表のファイルを開いて崩れを検証し、「乗り換えてはいけないケース」も正直に書きます。
→ vol.2「Office互換ソフト比較2026【中小企業向け】」は2026年9月1日(火)公開予定です。
「③台帳」の仕事が、まだExcelに残っている会社へ
顧客・案件・対応履歴のような台帳は、表計算ソフトを替えても楽になりません。anTechでは、初期費用0円・月額定額で業務システム(顧客管理など)を作り、必要に応じて社内オフィス環境もセットでご用意する「KIZUKI」を提供しています。
まずは相談だけでも
「うちのExcel、どこまでシステムにすべき?」「値上げ分をどう吸収する?」といった相談からで大丈夫です。Excelからのデータ移行もご協力いたします。